コラム連載一覧

<中里清志 ヨーロッパ大陸自転車単独横断をふりかえって>
-「65歳のチャレンジ」出版1年にあたり-

第15回:ポルトガル編(その2)

 いよいよ旅も最終章。前夜は女性主人のホテルで赤ワインをおいしくいただきました。朝、ホテル前の石畳の道路の片隅で、自転車の点検。フレームの埃を落とすなど、 いつもより時間をかけました。フロントで別れの挨拶と同時に、今日が私にとって特別な日であることを伝えます。優しい女主人からは、驚かれながら「コングラチュレイション!」と 励ましの言葉をもらいました。午前8時過ぎにスタート。天気もよく晴れ、自然とペダルを踏む足にも力が入ります。世界遺産の並ぶベレン地区の「ジェロニモス修道院」「新大陸発見モニュメント」 「ベレンの塔」の横を通って、最終目的地「ロカ岬」をめざします。
 途中、道に迷うことに。いつものように地元の人たちに聞きながら進むのですが、住宅地に迷い込み道が分からなくなってしまいました。困っていると、自転車に乗ったサイクル仲間のスペイン人の 若者が助けてくれました。大西洋沿いの最短コースの道へ、私を誘導してくれました。大西洋沿いにサイクルロードが続く海岸の先に、ようやくめざすロカ岬が見えてきて、胸は高鳴ります。 しかし、そこからひと苦労ありました。岬には、裏側からひと山越えていくことになりました。大西洋から吹きつける風は半端ではなく、喘ぎながらの上り道となりました。
 最後に苦労した分、白い灯台の建つ、緑に広がる岬の草原に出たときは、喜びはひとしおでした。一気にペダルをこぎ、最終目的地、ユーラシア大陸の最西端地のモニュメント前にたどり着きました。 着いたとたん、日本人・イタリア人の観光客に囲まれて、「ヨーロッパ大陸自転車横断」祝福の声を多くの人からかけられました。よく頑張って走ってくれた愛車「ミスター・ジャイアン」の後ろに 青く広がる大西洋を前に、しばらく思いにふけりました。アジア大陸の西の果てトルコのイスタンブールからヨーロッパ大陸の西の果てのポルトガル・ロカ岬までやってきました。 ここで、アジア大陸の東の果てのシベリアから続くユーラシア大陸は終わりになります。目の前の青く続く大西洋のはるばる先は、アメリカ大陸になるのです。
 岬の案内所で「ユーラシア大陸最西端地到着の証明書」を手にし、売店で記念の土産のTシャツを購入して、今日の宿泊予定地の「シントラ」に向かいました。世界遺産の街「シントラ」の 宿でゆっくりして、今回の旅の目的達成の実感があらためて湧いてきました。自分ながらよくたどり着けたと思いました。
 ヨーロッパの市民生活を垣間見て感ずるのは、一般的に日本と比べて市民がゆったりと暮らしているように思えます。若者も高齢者も長い休暇を利用し、昼間はカフェでお茶を飲み、 夜はバーでワインを飲み語り合う光景をよく見かけました。すべてではないにしても、こんな生活がヨーロッパの市民の間では、定着しているのかもしれません。日本人からみると、 いつ働いているのかと思う部分はありますが。
 こうした、ゆとりが日本にも求められると思います。最近の日本の勤労者の実態は、ますます多忙化が進行し、ブラック企業に見られるように働く者のいのちや健康を破壊するような勤務の 実態が明らかになっています。大手広告代理店・電通の新入社員が過労自殺に追い込まれた労働基準法違反事件の悲劇など、社会問題化しています。しかし、いっこうに改善されていません。 こうした、長時間労働は、働く者に考える余裕を与えず、社会や政治など社会問題に目を向ける余裕を奪い、結果として国民が政治や社会の問題に触れたり、関わったりする機会を失っています。 現在の日本の若い人たちの政治や労働組合への無関心にもつながり、労働組合の組織率が低下している原因にもなっていると思います。
 現在の安倍政権は、「働き方改革」の名の下に、労働基準法改悪法案を提出し、長時間労働に拍車をかけようとしています。内容は、残業時間について、「2~6か月の平均で月80時間」、 繁忙期は「月100時間未満」と定め、過労死ラインを超える残業時間を法的に認めるものになっています。また、「高度プロフェッショナル制度」は「残業代ゼロ法案」と言われ、 休憩・有給休暇・割り増し賃金・労働時間管理などの労働時間規制を完全になくしてしまう制度です。まさに、文字どおり日本の戦後の労働法制を根底から覆すものです。 今でも、過重労働が改善されず蔓延しているなか、ますます、長時間労働による働く人のいのちと健康破壊が心配されます。
 1886年(明治19年)に、アメリカの労働者が8時間労働制を要求して大規模なストライキで闘ったのがメーデーの起源です。「一日24時間の8時間は仕事のために、8時間は睡眠・休息のために、 残りの8時間は好きなことのために」をスローガンに行われました。しかし、あれから130年経つ今、いっこうに長時間労働規制は改善されない状態で、最近の日本ではむしろ悪化しているように思えます。 働く者が望むゆとりある生活からはほど遠い状態になっています。これは、安倍政権が労働者や国民の意見や意向を聞かずに、財界・大企業の要求を一方的に採用しているからでしょう。 安倍内閣は、この秋9月末からの臨時国会で、この「働き方改革推進法」の提案・成立を狙っていましたが、臨時国会の冒頭に衆議院を解散しました。解散・総選挙後の 法案提案を断念させため、長時間労働で働く人のためにも、この衆院総選挙は大事になっています。働く人々や国民の要求を実現するために、今の悪政を続ける「アベ政治」に終止符を打つことが 求められます。私たちも、地域から「市民と野党は共闘で、アベ政治ストップ!」の声を上げていこうと思います。
(なかざと きよし・元AOI<上尾桶川伊奈>労連議長、
                   現・憲法九条を守る上尾共同センター代表)


  「俺についてこい!」とロカ岬へ
  のベストなコースを教えてくれた
  ポルトガルのサイクル仲間に感謝。
 
  大西洋に沿ってすすむにつれて、
  ロカ岬が見えてくる。あともう少し。
  胸が高鳴る。

  ロカ岬への分岐点。これから、ひと
  山越えて行くことになります。  
    
 
  強風にあおられてたどり着いたロカ
  岬には緑の草原と青い大西洋が広が
  っていました。

  3カ月に及ぶ旅の最終目的地に
  到着した瞬間。思わず「ヤッタ
  -!」              
 
  早速、イタリア人のカップルが
  ヨーロッパ大陸横断の祝福の言
  葉をかけてくれました。

  青く広々とした大西洋。この先は
  アメリカ大陸になります。   
     
 
  ユーラシア大陸最西端の地に来たこ
  とを証明する「証明書」を受け取り、
  旅の締めくくり。

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